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前編では、ERP市場の動向としてクラウドERPのニーズが高まっていること、DX推進のためには、技術的負債を抱えた基幹システムからの脱却が急務であることをお伝えしました。後編では、クラウドERPの導入により技術的負債の原因となっているアドオンを回避して、いかに業務の標準化を進め、DXを成功に導くかについてお伝えしたいと思います。
これまでの標準化への取り組み
企業はこれまでも基幹システムの導入のたびに、業務の標準化に向けて努力をしてきました。例えば、自社業務と適合率の高いパッケージソフトと導入経験が豊富なベンダーを選定し、自社業務に精通した業務部門のエース級のメンバーと業務の標準化に向けて、何度もすり合わせを行ってきました。
しかし、いざシステムの本番稼働が始まると、事前に十分なすり合わせを行ってきたにも関わらず、想定外の処理が発生して業務がストップしたり、最初の月次決算で在庫の数字が合わずに締め処理が遅れてしまったりなどといったトラブルが後を絶ちません。それで結局は、「当社にとって標準化はまだ早すぎた」となってしまい、業務を元の属人的な作業に戻すことになってしまいます。これは、いったい何が原因でそうなるのでしょうか。
無理をしない標準化
さきほど申し上げた失敗例は、標準化する業務範囲が広すぎたことがひとつの原因となっています。業務には、どの業界のどの企業で誰が行っても差別化を図る必要がない「普遍的な業務」と、業種・業界に最適化された「専門的な業務」があります。また、企業にとって競争優位となるような「独自的な業務」もあります。このように業務には、普遍的な業務、専門的な業務、独自的な業務といった3種類の業務が存在するのですが、これらを区別することなく全て標準化しようとすると、業務が回らずに失敗してしまうのです。
これら3種類の業務のうち、無理なく業務を標準化するには「普遍的な業務」に限定するのが望ましいと考えます。理由は、ERPなどのパッケージソフトが対応できる業務シナリオが、元来どの企業でも行っている普遍的な業務に合わせているからです。
クラウドERPの導入が標準化を促進する
かつて、オンプレミス時代のERPは、すべての企業に選定してもらうために、広範な業務領域を標準機能として網羅してきました。また業界特有な商習慣に対応するために、各業界向けテンプレートが提供され、企業独自の業務に対応するためには、ERPのコア機能の中でアドオン開発が行われてきました。これらは、1つのパッケージソフトの中に組み込まれてしまったため、保守コストが膨らんでしまい、技術的負債の温床となっているのです。
一方、昨今のクラウド時代のERPは、この考え方を改め、「契約すれば、すぐに使うことができ、必要な機能だけを利用する」 いわゆるサブスクリプションに対する顧客ニーズに対応するために、あえて普遍的な業務領域のみをカバーするにとどめています。そのため、クラウドERPを導入することにより、無理をしない標準化を進めることが可能となり、その他の専門的な業務や独自的な業務は、ERP以外のソリューションで対応していこうという考え方になってきています。
疎結合でつなぐ
では、普遍的な業務以外の専門的な業務と独自的な業務についてはERP以外のソリューションで、どのように対応していけばいいのでしょうか。専門的な業務は、業界・業種に最適化された業務であることから、業界に特化した機能や業界をリードする企業グループに特化したテンプレートを備えたクラウドサービスで対応していきます。また独自的な業務は企業にとって競争優位となるような業務であることから、クラウド上の開発プラットフォームで独自開発した機能で対応していきます。
また普遍的な業務、専門的な業務及び、独自的な業務はそれら自体が単独に存在する業務ではなく、それぞれが緩やかに連携しているため、ERPとテンプレートを備えたクラウドサービス及び、クラウド上の開発プラットフォーム上で独自開発したアプリケーションを疎結合でつなぐことが必要になります。
DXを成功に導くためには
DXとはデジタル技術を利用してビジネスモデルを変革することでありますが、ビジネスモデルの変革とは、他社と比べて差別化された競争優位なビジネスモデルを構築することであります。競争優位なビジネスモデルは、今まで見てきた通り「独自的な業務」に依存するものであり、独自的な業務を実務上運用するためには、普遍的な業務の標準化が必要であり、専門的な業務と独自的な業務の組合せがDX成功のための鍵となります。
そのためにERPの見直しが必要であり、業務の標準化にはクラウドERPの導入が役立つ、またクラウドERPの要件は、疎結合で周辺業務とつなげることができることが必要となってくるのです。
コラム
ERP導入 成功のポイント(第2回)
クラウドERP導入の成功の鍵
- これまでの反省を踏まえた、
プロジェクトアプローチ(後編) –