コラム

RFPの書き方 基本解説

RFPとは Request For Proposal の略で、「提案依頼書」 と呼びます。RFPの目的は、 「より良いシステム提案をベンダーから引き出す」 ことにあり、そのためにはシステムに何を求めるかを 「要求事項」 の形で整理します。当コラムでは、RFPの作成方法をわかりやすく解説します。

RFPとは

RFPとは、Request For Proposalの略で、日本語で言えば「提案依頼書」となります。システム構築を任せたいベンダーを選定する際に、システムの仕様要求や調達条件を記載する文書となります。RFPを複数のベンダーに提示して、各ベンダーから提案を受けることで自社のシステム構築を任せるベンダーを決定します。

似た言葉にRFIがあります。これは Request For Informationの略で、日本語で言えば「情報提供依頼書」となります。RFIはRFPの前に作成する文書であり、RFPの提示先候補となるベンダーの情報を収集するために作成します。RFPに丁寧に回答してもらえるベンダーを探し出し、事前に自社と合わないベンダーを振るい落とす目的があります。

RFIとの違い

このようにRFPとRFIは似たような言葉ですが、その内容と目的はかなり異なります。
また提示する順番ですが、簡単なフローでご説明すると、

RFIの提示 → RFPを提示するベンダーを絞る → RFPの提示 → 導入ベンダーの決定

となります。

通常、RFIを10社程度のベンダーに送付し、ベンダーの回答内容により5社程度に絞り込んでからRFPを提示するのが一般的です。
なおベンダーを絞り込む際には、以下のように順位をつけてみましょう。

1位:本命ベンダー
2位:本命の競合ベンダー
3位:既存ベンダー
4位:新しい視点を持つベンダー
5位:補欠ベンダー

RFPの目的について

RFP(提案依頼書)の目的は一言でいえば、「より良いシステム提案をベンダーから引き出す」ことになります。より良い提案をベンダーから引き出すためには、必要最低限なポイントに絞ってシンプルなフォーマットで「要求事項」を文書化します。

要求事項とは、課題を解決するためにシステムに「何を求めるか」を明確にした項目のことを指します。要求事項を洗い出すタスクは要求定義と呼ばれ、要件定義とは呼びません。またベンダーからベストな提案を引き出すためには、要求事項に具体的なソリューションは記載しません。

要求定義は要件定義とよく混同されがちですが、次にご説明する要件定義ではないことに注意が必要です。

要件定義との違い

要件定義とは導入プロジェクト開始後に実施するタスクであり、具体的なソリューションに従ってシステムが実装すべき機能や満たすべき性能を明確にします。つまり、ソリューションに合わせた現実的に実現可能な仕様を明確にします。

誤った事例として、要求事項ではなく要件事項をRFPに記載している例があります。RFPの作成をコンサルティング会社に依頼して、現行システムの改良版を想定した要件事項を1000行近いExcelに整理しています。RFPでは、この要件事項に沿ってベンダーが提案するソリューションで実現可能かどうかを〇×で回答を求めます。

これではERPなどパッケージを提案したいベンダーは提案に困ってしまいます。要求を明確にせずに先に要件を決めてRFPに記載してしまうと、結果的にはベンダーからよりよい提案を受けることができません。その理由は、現行システムの改良版を想定してしまっているからであり、現行システムとは異なるソリューションを提案しようとすれば、どうしても大量のアドオンが発生してしまうからです。

要求事項のまとめ方

要求事項のまとめ方として、まずは業務内容を業務一覧のかたちで整理し、その横に要求事項を細分化しすぎないように記載します。
具体的にいえば、業務内容を業務一覧の左端に表記の粒度を大>中>小の順番で分類し記載します。

例)(大)受注管理 >(中)受注入力 >(小)得意先別受注一覧

この分類によって業務を体系化することができ、モレなくダブリなく業務を洗い出すことができます。その右横には、業務内容に沿って要求事項を記載します。

例)受注管理>受注入力>得意先別受注一覧 ・・・・・(要求事項)グループ会社単位で確認できること

業務一覧上では要求は詳細化しすぎないように注意してください。詳細化しすぎると、ベンダーからの提案の余地を狭めてしまうこととなります。要求事項は、「業務上の要求事項」と「システム上の要求事項」に分けて記載し、Excel上に表形式で整理するのが良いでしょう。

要求事項の洗い出し方

要求事項は、現場だけでなく経営者やマネジメント層にもヒアリングすることが必要です。現場ばかりにヒアリングしてしまうと、要求は担当者レベルの課題を解決するものに限られてしまうからです。マネジメント層にヒアリングすることで、要求は部門全体に関する課題を解決するものに広がる可能性があります。

また経営層にヒアリングすることで、要求は会社全体に関する課題を解決するものに広がる可能性があります。このように、現場→マネジメント層→経営層とヒアリング対象の階層を上げることにより課題の視座が高まり、結果として経営に役立つシステム像を描くことができます。

但し、ヒアリングの順番としてはこれとは逆で、経営層→マネジメント層→現場の順に下の階層に降りる方法が有効です。経営層やマネジメント層の課題を先に把握することで、現場にヒアリングした際に膨大にでてくる課題を整理する際の「羅針盤」となるからです。

現場課題のまとめ方

現場課題というものは、玉石混合です。現場課題をヒアリングするには現場ごとにセッションをすることとなりますが、そこで出される課題は業務担当者個人の問題であったり、単なる帳票や画面のレイアウトの問題であったりして、拾い上げればきりがない類のものが混在します。

もちろん中には経営に直結するような鋭い指摘もでてきますが、そういった経営課題に直結するような課題を拾い上げるためには、先にも述べました通り、現場より先に経営層やマネジメント層にヒアリングしておくことです。

現場から出てきた業務課題、システム課題のうち、「経営にインパクトのある課題」と、経営には直結しないが「現場では常に認識される課題」を拾い上げることとし、それ以外の現場課題は拾い上げないというスタンスで要求事項をまとめてください。

RFPに記載すべきポイント 

要求事項を含めてRFPに最低限記載すべきポイントとして、次の5項目を挙げます。

①目的とゴール
・何のためにシステムを構築するのか?
・システムを構築し、何を達成することで成功とするのか?

②対象範囲
・システム構築の対象範囲はどこになるのか?
・システム構築の対象範囲と対象範囲外との境界はどこになるのか?

③要求事項
・現状の業務課題、システム課題を解決する改善策は何か?
・将来を見据えた、自社に最適なシステム化方針は何か?

④開発体制と役割
・自社の体制と役割は何か?
・導入ベンダーに求める体制と役割は何か?

⑤本番稼働時期
・システムの本稼働時期はいつか?
・本稼働に至るまでのマイルストーンは何があって、時期はいつか?

詳細なRFPの記載はベンダーの提案の幅を狭めてしまう恐れがありますが、これら5項目以外にプロジェクトリスクを回避するために必要な項目は、必ず記載するようにしてください。

システム化方針の策定について

要求事項のひとつにシステム化方針がありますが、そのまとめ方は今まで申し上げた要求事項から落とし込むだけではなく、想定するパッケージのもつ特長を生かした整理方法が有効です。そうすることにより、パッケージの持つ標準機能を最大限利用した提案を受けることができ、ムダなアドオンを排除し、想定するパッケージからの付加価値を最大限享受することができます。

要求事項からシステム化方針を落とし込むだけでは、新システムは自社要求レベルにとどまり、アドオンも発生してしまいがちです。しかし想定するパッケージのもつ特長を生かしたシステム化方針とすれば、そのパッケージの持つ特長を最大限に生かすことが可能となり、長期にわたり保守運用で苦しんできたアドオンを削減することが可能となります。その結果として企業全体の業務効率化が実現し、しかも要求にはない付加価値も享受することができるのです。

導入しようとするパッケージを想定する

システム化方針を策定する際には、導入しようとするパッケージの想定を行っておく必要があります。想定もしないで、ゼロベースでパッケージを選定しようとすると必ず失敗します。なぜなら、ベンダーから受領した提案書の比較が難しくなってしまうからです。

またパッケージだけでなく、スクラッチ開発やコンバージョンも想定してしまうと、ベンダー選定の際に何を基準にして選定すべきか、わからなくなってしまい、横並びでベンダー選定ができなくなります。結果として、一番導入費用の安いベンダーの提案を採用することとなり、そもそも実現したかった目的が達成できなくなります。

ERPの導入に関して言えば、想定する新システムはオンプレかクラウドか?といった選択肢がありますが、今はクラウド一択ではないかと思います。クラウドは、基幹システムの運用コストを削減し、サブスクリプションという形でコストの見える化が可能となるからです。

RFPテンプレート

ご参考までに、RFPに記載すべき項目を下図に列挙します。要求事項は、機能要求、非機能要求および、その他要求に分けて記載します。システム化方針は、要求事項とは別の章立てで記載します。

RFIテンプレート

ご参考までに、RFIに記載すべき項目を下図に列挙します。RFIで回答を得たい情報としては、ベンダーの会社情報とベンダーが提供できるソリューションや特徴と強み、そして導入事例が挙げられます。RFIはできるだけ、早い時期にベンダー提示します。なぜなら、ベンダーに正式提案までの時間を十分に与えることで、よりよい提案を受けることができるからです。

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